nokosu社長インタビュー

「辞める人が多くて、本当に真剣に考えました」——わかばケアセンター・北爪初江が27年かけて育てた、人の居場所

「辞める人が多くて苦労したからです」と、北爪初江さんはすこし間を置いてから言った。なぜ社員のためにここまでするのか、と聞いたときの答えだった。27年の積み重ねは、嘆くことをやめて実行することを選んだ一人の経営者の、その跡形だった。

北爪初江さん

「バブルがはじけて、じゃあ次の仕事は何かって」

1999年7月、北爪さんはわかばケアセンターを立ち上げた。きっかけは、夫が携わっていた建設・設備業が、バブル崩壊の余波で揺れ始めたことだった。

「次の仕事は何かということを考えて、たまたまおばが介護関係の仕事をしてたので、これがいいだろうという形で始めました」

翌年の2000年4月、介護保険制度がスタートする。北爪さんはまさにその直前に業界に飛び込んでいた。法整備もまだ整っていない。ケアマネージャーという職種の認知度も低く、なり手が少なかった。ケアマネがいないと介護保険の仕事ができない——そのケアマネを集めることが、最初の壁だった。

「辞める人が多くて、本当に真剣に考えました」

ヘルパーは募集をかければ集まった。だが社員は定着しなかった。残業続きで疲弊し、辞めていく。次を探す前に辞めてしまう。また募集をかける。来ない。

「ただ単にやめちゃうんだよね、募集しても来ないんだよね、って言ってたって、しょうがないじゃないですか」

嘆くだけでなく、実行に移した。最初に手をつけたのは資格取得の費用を会社が負担することだった。勉強しながら働く職員のために時間も作った。効果はすぐには出なかった。「徐々に辞める人が少なくなっていった」という実感が出てくるまで、数年かかった。

嘆いているだけじゃなく、実行しないとね。それだけのやっぱり努力しないとなかなか

一つずつ、積み上げてきた

ワークライフバランス認定の取得。健康経営優良企業の認定。ICTの早期導入。退職金制度の整備。管理者研修のリモート化——。

ICTの導入は「足立区で一番だったんじゃないか」と北爪さんは振り返る。訪問介護でヘルパーがボタン一つで入退室を記録し、それが請求に連動する。かつては紙に手書きして、会社に持ち帰り、手入力していた作業がなくなった。

「パソコンが数台しかなくて、みんなで回して使ってた時代があったんですよ」

今は1人1台。その判断に資金がかかることは分かっていた。だから借り入れもした。「そこに力を入れるっていうのは、経営判断ですよね」

健康経営優良法人2026(中小規模法人部門・ネクストブライト1000)の認定は、健康診断の受診徹底からはじまり、再検査のフォロー、禁煙対策、ストレスチェック、産業医の配置まで、数年かけてクリアしてきた。

健康経営優良法人・健康優良企業認定証

誕生日のケーキと手紙を200人分、社員の健康を考える

毎年、社員・パート約200人の誕生日に、ケーキとお弁当とプレゼントと手紙を届ける。事業所まで直接。

「手紙は定型文があって、下の方に一言、手書きで書き加えるんです。封筒に入れて届けます」

眼科検診と骨密度検査は会社負担で受けてもらう。パソコン業務が多い社員の目を守り、身体介護で腰に負担がかかる職員の骨を守る。

「社員を大切にしてるってことの表れですし、会社に対しての貢献度も、健康じゃないと仕事できないですよ」

社員の健康を考える。これが、北爪さんが大事にしている健康経営だ。

「コーラス部を立ち上げたのは、私なんです」

職場のコミュニケーション不足が離職につながる。そう気づいた北爪さんは、社員が自分でサークル活動を立ち上げられる仕組みを作った。山登り、子育て、ウォーキング——好きなことで人がつながれば、職場にも根を張る。会社は一人あたりの補助金と、ノー残業デイを提供し、サークルへの参加を促進する。

「コーラス部を立ち上げたのは、私なんですよ」と笑った。

いずれそのメンバーでわかばケアセンターのテーマソングを歌いたい。歌詞はもうできている。メロディーは今、作曲を依頼中だ。3年後の創業30周年に間に合わせたい、と北爪さんは言った。

「若い人が集まる会社じゃないとダメ」

スタッフは今、ヘルパーも含めると450名ほど。人事部門には若い人材が集まってきている。

「介護って、きつい・汚い・臭い・危険・給料が安いって言われてきたじゃないですか。そうじゃないんだよって、人に喜ばれる仕事なんだよって。若い人たちと一緒にそれを伝えていきたい」

27年続いてきた会社の核にあるのは、辞めていく職員を前にして「なんとかしよう」と思い続けた一人の経営者の意志だった。

「辞める人が多くて苦労したからです」——その言葉の重さが、北爪さんの笑顔の奥にある気がした。

北爪初江さん

プロフィール

北爪初江(きたづめ はつえ)
株式会社わかばケアセンター代表取締役。1999年7月、わかばケアセンターを創業。介護保険制度スタート直前に事業を立ち上げ、27年にわたり足立区を拠点に訪問介護・デイサービス・福祉用具貸与・訪問マッサージ・飲食など多様な介護サービスを展開。健康経営優良法人2026(中小規模法人部門・ネクストブライト1000)認定。社員・パート約200名、ヘルパーを含む総スタッフ450名。

株式会社わかばケアセンター
〒121-0813 東京都足立区竹の塚1-33-10
TEL:03-5809-6202
https://wakaba-care.co.jp/

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