nokosu社長インタビュー

「売国奴」と呼ばれても、諦めなかった──VUCAdapt・木村功二が外国人材支援を20年続ける理由

「売国奴」と呼ばれても、諦めなかった――VUCAdapt・木村功二が外国人材支援を20年続ける理由

外国人材の支援に携わって20年以上。200社超の企業で採用・育成に関わってきた木村功二さんは、2025年5月に株式会社VUCAdaptを設立した。「売国奴」と批判されたこともある。それでも諦めない理由は、驚くほどシンプルだった。「外国人と話してると、楽しいんですよね」──穏やかにそう語る目の奥に、静かな確信が宿っていた。

「この人がいたら、未来しか見えない」──一つの出会いが動かしたもの

ある日、一通の相談メッセージが届いた。地方の国立大学理系学部を卒業したマレーシア人女性からだった。「自分に合うお仕事はありませんか」。

中国語、英語、日本語を流暢に操り、理系の専門知識を持つ彼女は、自分のスキルを活かせる場所をずっと探していた。木村さんは動いた。複数の企業に打診した。「外国人は採用しない」「経験者じゃないと採用できない」と断られ続けた。それでも動き続けると、一社が「ぜひ採用したい」と言ってくれた。

採用後、その社長はこう言ったという。「この人がいたら、未来しか見えない」

「雇用ってやっぱりドラマがあるんですよね。こういう瞬間のために続けてるんだと思います」

雇用ってやっぱりドラマがあるんです。社長から喜んでもらえて、本人から喜んでもらえて。こういう瞬間のために、続けてるんだと思います

「外国人と話してると、楽しいんですよね」──20年続けてきた、本当の理由

木村さんが外国人材のビジネスに携わって、もう20年以上が経つ。起業のきっかけを語る前に、まずこの一言が出てきた。

「客観的に日本を見てくれる視点があって、気づかされることが多くて。それを少しでも伝えていきたいという思いに駆られるんです」

たとえば、こんな場面がある。外国人社員が「会議の場でみんなで話し合えばいいじゃないですか」と言う。日本人の上司は「根回しなしに話は通らない」「みんなも意見を出さない」と返す。その光景を見て、木村さんはこう思う。「確かに無駄だな」と。

心理的安全性が低い組織の問題は、内側からはなかなか気づけない。外から言ってもらって初めてわかる。「そういうことを日本の会社に伝えていきたいという思いが、ずっと続けている理由だと思います」

「コストじゃなくて、資産として見てほしい」

木村さんが企業に外国人材を紹介する時、伝えたいことがある。「人件費というコストとして見るんじゃなくて、未来の資産として見てほしい」

実際にこんな事例がある。日本で採用した外国人材が、後に母国に戻り現地責任者に就任。その人材を入口に、海外市場への扉が開いた会社があった。

「少子化で国内市場が縮んでいく中、外国人材を受け入れた会社と受け入れていない会社では、5年後・10年後に大きな差が出ると思っています。外国人が1人いるだけで、『うちのサービス、海外で通用するの?』を社内で聞ける。それだけでも全然違うんです」

さらに木村さんが強調するのは、外国人材を採用する”副産物”だ。採用しようとすると、否が応でも「なぜその仕事をするのか」「将来どうなれるのか」を言語化しなければならない。それがめんどうに見えて、実は組織を強くするプロセスになる。「日本人も外国人も、ビジョンを見せてもらえない職場は長続きしない。同じことなんです」

それでも「簡単でないこと」は正直に話す

外国人材採用のデメリットも、木村さんは包み隠さず話す。「文化の違いがあって、『まずは指示に従ってくれ』だけでは通じない。心理的なコストも労力もかかります」

早期退職のケースも経験してきた。「外国人の方から『こんな低いレベルの会社でやってられない』と言われて辞められたこともある」。それは外国人だから起きた問題ではない、と木村さんは続ける。

「深掘りすると、その会社は日本人にも同じような辞め方されてるんですよ。退職代行サービスが生まれた背景って、「言わなくてもわかるだろう」という対話を省きがちな日本の職場の問題なんだと思っていて」

「外国人が働きやすい職場は、若い日本人にとっても働きやすい職場になる」──これは理念ではなく、採用してくれた会社の社長たちから実際に聞いてきた言葉だという。

「批判されることもあります。それでも信じています」

「売国奴」と言われたこともある。「日本人の仕事を奪うな」と批判を受けたこともある。

それでも木村さんの口調は変わらない。穏やかに、静かに、こう言う。

「外国人犯罪がニュースになると、同じ国の外国人が本当に心を痛めているんですよ。中国人やベトナム人の方が『勘弁してほしい』って言ってたり。十把一絡げに批判されるけど、個々と話してみると、ちゃんと思いがある。良さもある。それを引っ張り出しながら伝えていきたいんです」

日本を好きで来ている外国人は多い。「紫式部の文学を読んで日本に興味を持った」という人も、「武士道が好き」という人も、実際に会ってきた。「日本人でちゃんと日本の良さを自覚できてる人がどれだけいるか、と思ったりするんですよね」

外国人も日本人も、関わったコミュニティで人は変わる。接してみたら意外とわかり合える。そう信じてやっています

AI時代だからこそ、「対話」の価値が上がる

翻訳や通訳の仕事がAIに代替されていく中で、外国人材ビジネスはどうなるか。木村さんはこう見ている。

「テキストベースの業務は確かにAIが担うようになる。でも、リアルな対面での気づきや、そこから生まれる新しいサービスのアイデアは、AIには難しい。偽物が精緻になるほど、本物の対話の価値は上がると思っています」

5年後・10年後に向けてもこう言う。「今、外国人雇用を経験した会社と経験していない会社では、組織の器が違ってくる。苦労しながらでも一度やっておいた方が、絶対にいいと思うんです」

足立区から、日本を変えたい

木村さんが拠点を置く足立区は、実は外国人が多い地域だ。高度な外国人材も、気づかれないだけでたくさん住んでいる。

「ここでうまく融合できれば、他の地域にはない魅力が生まれると思っていて。今は広範囲に動いていますが、いずれは自分の住む足立区でもっと貢献したい」

将来の夢を聞くと、こんな答えが返ってきた。「会社を長く続けて、いつか若い世代に引き継げるくらいに成長させられたら」。そして、憧れている会社の話をしてくれた。

「社長さんが自分の給料より従業員の給料を高く設定している会社があって。『別にこのくらいでいいんだよ』って言ってる。あれはすごくいいなと思って。なんかそういう会社に、なれたらいいなと思います」

インタビューが終わりに近づいた頃、木村さんの目がわずかに光った。「なんか涙が……すいません」と照れながら笑った。20年間、静かに積み上げてきた思いが、その瞬間にあふれ出ていた。

プロフィール

木村功二(きむら こうじ)
株式会社VUCAdapt 代表取締役。経営学修士(MBA)。海外支社を持つ人材コンサルティング会社での外国人エンジニア・研修生招聘事業を皮切りに、介護・看護領域の新規事業責任者、公益社団法人や上場企業グループの要職など、外国人材ビジネスに20年以上携わる。200社超の企業で採用・管理・育成に関与してきた実績を持つ。2025年5月、「共生から共創へ。多様性が、力になる社会をつくる」をミッションに株式会社VUCAdaptを設立。東京都足立区を拠点に、高度外国人材の紹介から定着支援・異文化マネジメント研修まで一体的に提供している。

株式会社VUCAdapt(ブーカダプト)
〒120-0026 東京都足立区千住旭町11-7-401
TEL:03-6837-0505(平日9:00〜18:00)
https://vucadapt.co.jp/

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